otaku8’s diary

映画のこととか

バットマン映画を振り返ってみる

 『ザ・バットマン』公開記念で歴代バットマン映画(劇場公開されたもの)にコメントしていきたいと思います。

『バットマン:ザ・ムービー』


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 アダム・ウェストがバットマンを演じる60年代TVシリーズの劇場版。他のシリーズからバットマンに入った人はテンションの差に驚くんじゃないか。バット・スプレーや爆弾を両手に持って右往左往するバットマン等、数々の伝説を残していて、これはこれで良いのではと思う作品。

『バットマン』


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 アダム・ウェスト版から一転、ゴシックな雰囲気のゴッサムシティが最高なティム・バートン監督作品。マイケル・キートン演じるバットマンはビジュアルはあまりブルース・ウェイン感はないが、ブルースが秘めている狂気をよく体現していてとても良い。キートンはここに来て『ザ・フラッシュ』や『バットガール』などDC映画にバットマンとしてリターンしており、楽しみだ。ジャック・ニコルソン演じるジョーカーは体型以外はほぼ理想的なジョーカーだたと個人的には思う(そもそもジョーカーにおける「理想」とは?問題はあるが)。本作ではブルースの両親を殺したのはジャック・ネイピアであり、ネイピアを薬品タンクに落として彼をジョーカーに変えたのはバットマンだ。つまり、お互いがお互いを生み出したという関係性になっている。これはバートン版のオリジナル設定で、自分は他作品で描かれたように「何処にでもいるような男に路地裏で理由なく殺されるウェイン夫妻」が好きだが、バートン版ではこの設定によってバットマンとジョーカーの共依存関係が強調されている。ただ、このバットマンは普通に人を殺す為、全体的に見ればその感じは少し弱い気もする。

 劇伴はダニー・エルフマンが担当していて、アメコミ映画の中だとジョン・ウィリアムズの『スーパーマン』と並んで素晴らしい。テーマ曲は勿論だが、特に好きなのはラストにかかる曲"Finale"だ。ダークで荘厳な曲調のテーマ曲とは少し違い、ラストのパートはヒロイズムに溢れている。

 一応、『バットマン&ロビン:Mr. フリーズの逆襲』まで同じシリーズであるが、正直そうは思えない(アルフレッド役のマイケル・ガフとゴードン役のパット・ヒングルは全4作に出演)。

『バットマン・リターンズ』


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 バットマン、ペンギン、キャットウーマンという三人の孤独な怪人の悲哀が描かれる、いかにもティム・バートンらしい作品で、クリスマス映画の鉄板(?)かつバットマン映画の傑作。なんと言ってもペンギン役のダニー・デヴィートが素晴らしい。バートン色に染まったペンギンで、彼の哀しみと怒り、恐ろしさと滑稽さを見事に表現している。

 バートン版は印象的な名台詞が多い。例えば前作の「月夜に悪魔と踊ったことはあるか 」とか本作の「ただいま!あなた…独身だったわね」「冷たい飲み物をくれ…」。観た人なら分かるだろう。

『バットマン:マスク・オブ・ファンタズム』


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 アニメイテッド版『バットマン』の長編でアニー賞にもノミネートされた作品で、自分が一番好きなバットマン映画である。元ネタは『バットマン:イヤーワン』と『イヤーツー』だと思うが、本作はそれらの要素を上手いこと取り込んでいる。本作ではブルースがバットマンを始めるまでの過去パートと彼が謎の怪人ファントムを追う現在パートが交互に語られ、ブルース・ウェインにとって「バットマン」とはどういう存在なのかがフィルム・ノワールのような雰囲気の中、掘り下げられていく。この映画の中で好きなのが、「ゴッサム・ワールド・フェア」というテーマパークだ。ここではゴッサムの明るい未来世界が広がっており、この街の希望を象徴した、まさに理想郷である。この場所の行く末と「バットマン」という呪縛に囚われるブルースの物語が重なり、奪われてしまった現在/未来に対する儚さと哀愁を感じさせる。 

 声優はバットマン役がケヴィン・コンロイ(玄田哲章)、ジョーカー役がマーク・ハミル(青野武)というアニメシリーズから引き続く鉄板コンビで最高。

『バットマン・フォーエバー』


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 一作目ではビリー・ディー・ウィリアムズ演じる黒人のハービー・デントが何故かトミー・リー・ジョーンズに変わってジム・キャリーのリドラーと一緒に暴れ回る。こんなハイテンションなジョーンズは中々珍しいと思うので、そこは見どころ。作品のトーンは前二作よりもアダム・ウェスト版のように明るくなっている。公表はされていないがシリアスな三時間バージョンもあり、それは観てみたい。実際、ストーリーはブルースのトラウマを掘り下げていくものだし、サーカスでの悲劇を発端とするロビン誕生譚でもあるので、4作目に比べたらダークなテイスト。テーマ曲はエルフマンのものとは違うが、こちらも結構好き。

『バットマン&ロビン:Mr. フリーズの逆襲』


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 バートン版にあったダークな雰囲気は前作から更に薄まり、アダム・ウェスト版のノリにより近く。バット・クレジットカードやポイズン・アイビーの色気(毒)にやられたバットマン&ロビンが対立する展開等、リアルタイムで劇場で観ていたら酷評してしまいそうな(確実に酷評している)要素が多いが、今となってはこれはこれで嫌いではない。監督のシュマッカーが自分のバットマン映画が批判されてきたことに対して謝罪していたが、ちょっと気の毒に思う。Mr. フリーズを演じるシュワルツェネッガーといえば吹き替えは玄田哲章さん。玄田さんといえばアニメイテッド版のバットマン。若かりしバットマンを描くアニメ『ザ・バットマン』ではMr. フリーズを玄田さんが声を担当していて、何か縁を感じる。

『バットマン・ビギンズ』


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 『ダークナイト』の影に隠れている感じがあるが、結構好きな作品。本作のゴッサム・シティには先進的な都市部と荒廃したスラム街があり、三部作の中では一番架空の都市という雰囲気で(『ダークナイト』はほぼシカゴ)、そこには『ブレードランナー』の影響が強く感じられる。都市部には市民の為のモノレールが開通しているが、それはゴッサムの希望の象徴のよう。その顛末も含めて少し『バットマン:マスク・オブ・ファンタズム』っぽい(両方とも『イヤーワン』の影響がある)。あとリーアム・ニーソンがブルースの師匠を演じているが、やっぱりニーソンの「マスター感」は凄い。

『ダークナイト』


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 初めて本作を観たのは劇場だが、冒頭の銀行強盗のシーンから鳥肌が立っていた。小学生ながらジョーカーを演じるヒース・レジャーの演技の凄まじさに圧倒されたのと、その恐ろしさを助長するハンス・ジマー作曲の不協和音が常に緊張感を煽ってきたからだ。『ダークナイト』はストーリー云々の前に演技や音楽、IMAXカメラの映像など「映画的ルック」に魅力がある。

 ジョーカーの話題で持ちきりの本作だが、自分はアーロン・エッカートのトゥーフェイスが素晴らしいと思っている(こちらはハイテンションではない)。トゥーフェイスのパートの音楽を担当したのはジェームズ・ニュートン・ハワードで、ジマー作曲の「混沌」をもたらすジョーカーのテーマとは対照的な、天秤がグラグラと揺れているようなスコアが良い。

『ダークナイト・ライジング』


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 とても期待させる予告編。『ダークナイト』と比べて本作のリアリティの欠如を批判する声もあるが、そもそも『バットマン・ビギンズ』でのリアリティラインはそこまで高くはなく、しかも本作は『バットマン・ビギンズ』との関わりが強い。『ダークナイト』が三部作の中では異質なのだと思う。前二作ではジマーとニュートン・ハワードが共同で音楽を担当していたが、今回はジマーのみ。それもあってか、繊細さよりも勢いが強調された印象のスコアに。音楽でいうとネットで世界中から声を集めて作成した"DESHI BASARA"が非常に印象的。ジマーはノーランとの仕事だと気合いの入れ方が変わるのか、面白い試みをするような。

 驚いたのはここにきてアダム・ウェスト版のオマージュみたいな場面を入れてきた(爆弾の件)ことだ。このシーンをはじめ本作には雑なところが多々あるが、勢いで押し切ってしまうあたり、ノーラン本人もどこかのインタビューで言っていた(確か?)ように、往年のハリウッド大作的な後味で嫌いにはなれない。

『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』


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 ベン・アフレック版バットマンの好きなところは、まずグレータイツ型のスーツへの回帰だ。そもそも自分は『バットマン』以降のブラックアーマー型スーツよりもこの灰色のタイツ姿に慣れ親しんでいる。また、筋骨隆々なアフレックがこのスーツを身に纏うことでバットマンという男の変態/狂気性が強調される。これは個人的な印象だが、アーマー型の場合、あくまで「スーツを着た人間」という認識が残るが、一方でタイツ型スーツを着たアフレック版バットマンはもはや「人間ではない何か」に思える。そのスーツがブルースと一体化し、バットマンという別の生物に生まれ変わるのだ。

『レゴバットマン ザ・ムービー』


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 「レゴアニメだから」と侮ってはいけない。他作品と比べると確かにコミカルでトーンが異なるが、実はバットマンの本質、特にジョーカーとの関係性を描いた映画でもある。その描き方がとても巧い。過去のバットマン映画のネタも沢山出てきて楽しい。『ダークナイト』のジョーカーの台詞"You complete me "と同じ台詞が登場する、とある映画のワンシーンが流れるところで笑った。因みに本作のキャットウーマン役のゾーイ・クラヴィッツは『ザ・バットマン』でもキャットウーマンを演じている。

『ジャスティス・リーグ』


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 ザック・スナイダーが製作途中で降板したことを受けてジョス・ウェドンが引き継いだ作品。「引き継いだ」と言いながら、ザックの意図とは大分違った映画になっている。バットマンに関して言えば、このウェドン版はあまり好きではない。スナイダー版には無かったギャグ要素のせいか、全体的に何となく馬鹿っぽく見えてしまうのだ。

『ニンジャバットマン』


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 OVA『バットマン:ゴッサムナイト』に続く、日本版「バットマン」。アイデアは面白いし前半は割と好きだが、後半の突飛な展開はあまり好きではない…嫌いではないが。キャラクターの深掘りがあまり出来ていないように感じた。ジョーカー役の高木渉さんは、アニメイテッド版でお馴染みの青野武さんを少し感じさせて好き。

『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』


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 ザック・スナイダーが完成させた本来の『ジャスティス・リーグ』。全編ダークな四時間の一大巨編。客に迎合しない(多くのファンは本作を求めていたが)「ザックの作家主義映画」として非常に良かった。ウェドン版にあったバットマン描写の欠点も解消。不満を言うなら、そもそもザックと自分のヒーロー観が違っているのだが、本作のバットマンは銃を頻繁に使う。自分は彼には銃を使って欲しくない。全体的には製作の背景も含めて2021年映画のベスト。映画館で観たい作品であるが、これは中々難しそう。