otaku8’s diary

映画のこととか

『ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット』を観た(ネタバレあり)

 遂にザック・スナイダーカットJLを観たので感想を書いていこうと思う(まだまとまってないけど)。

 

 全体的な感想は、不満もあるものの予想よりも遥かに楽しめ、熱くて良い作品だと感じた。不満の部分はスナイダー的ヒーロー像と自分の理想とするそれのズレから生じるものだと思うのではじめから何となく予想はしていたが。

まず良かったところから。まずは何よりキャラクターの掘り下げが劇場版に比べて遥かに為されている。特にサイボーグが素晴らしく、あんなに魅力的なキャラなのに何故劇場版では彼にまつわる物語の多くがカットされてしまったのか不思議でならない。サイボーグ役のレイ・フィッシャーが今後DC映画に出るか怪しいのが残念だが、今作だけでも彼の魅力は十分伝わっていたと思う。バットマンも良かった。劇場版ではギャグシーンのせいもあり、少し間抜けに見えていたが、今回は不用不急なギャグは無くなり、しっかり彼の強さが伝わってきた。BvSでの自らの行いに対する罪悪感が彼の原動力になっているところも前作へのアンサーの一つになっていて良い。各キャラクターにはしっかり見せ場が用意されており、特にフラッシュ関連の描写は素晴らしかった。フラッシュポイントをやるという単独作も楽しみ。キャラクターだと登場時間は短いが、デスストロークとジョーカーも非常に良かった。前者は未だアクションシーン皆無なので今後の作品で暴れて欲しいところ。後者はスースクとはまるで違うビジュアルもさることながら、僅かな時間でバットマンとの関係性を提示する対話シーンが素晴らしく、今後も出てきて欲しい。以前から噂されていたスワンウィック長官=マーシャン・マンハンター説も立証されて嬉しみ。DCAUを観ていた身としては彼もJLに加わって欲しいが…?

劇場版と印象が違った大きな要因が音楽。劇場版はダニー・エルフマンが担当しており、彼はヒーロー映画だとバートン版『バットマン』シリーズやライミ版『スパイダーマン』シリーズで非常に印象的なテーマを残していて好きな作曲家なのだが、JLではいまいち印象的なモチーフが無かった。旧スーパーマンやバットマンのテーマを使用していたが、何故か控えめな使い方で期待はずれであった。一方でジャンキーXLによる今作の音楽は各ヒーローについて印象的なモチーフをちゃんと残しておりとても良かった。特にDCEUスーパーマンのテーマを適所でしっかり使ってくれたのは嬉しかったし、フラッシュのテーマ(?)At the Speed of  Force は名曲で、様々な人がYouTubeなどでカバーしているのも納得。

 

 他にもアクションシーンの強度が上がったことや映像の色味がダークになりキレが増したこと等、良いところが沢山あった。

 

 4時間を超える超大作だが、不思議なことに時間は秒で過ぎていった。製作実現までの長い過程を追っていたからかもしれないが、純粋に作品が面白いからだと思う。MoSとBvSに比べて良い意味で単純にアツいヒーロー映画だった。

 

  あと今作と劇場版を比べると、どのシーンがジョス・ウェドンによる撮影か分かってしまうのも面白い。個人的には、繰り返しになるが、劇場版で度々挿入されていたギャグの数々が無くなっていたことが嬉しかった。

 

 不満なところは主に二点で多分スナイダー的ヒーロー像と自分の理想のそれが合っていないことに起因すると思うが、まずは一般人の描写が少ないことである。自分は元々ヒーロー映画では一般人の描写を通じてヒーローと社会の「対話」を描いて欲しいと思っている派。本作はそのような関係性を描く価値のある作品だと思うのだが、残念ながらそのような描写はあまり無かった。冒頭で少女に「私もあなたのようになれる?」と問われたダイアナが「何にでもなれる」と答える場面や、「誰にも"善の力"があり、人々はお前に憧れ、共に奇跡を起こす」と説くジョー=エルの台詞をバックにクラークがスーパーマンとして復活する場面。せっかくこのようなシーンを入れているのだから、もっとヒーローに対峙した人々の反応を描いて欲しかった。因みに、劇場版でのロシア人の下りはその点を意識してくれたことは嬉しかったが、見せ方は今ひとつに感じた。

 

 もう一つはかなり暴力的であること。いや、暴力的な描写自体は好きなのだが、ジャスティスリーグ一作目にそれは合っているのか?と感じた(スナイダー監督作としては合っているだろうが)。先ほど"善の力"というキーワードがあったが、ヒーローたち(フラッシュとサイボーグ以外)の戦闘集団としての暴力性が強く、彼らに宿る普遍的な善性が見えにくかった。例えばステッペンウルフに対する最後の連携プレーは確かにカッコいいが、やり過ぎに感じる。

 

 合わないところや不十分に感じたところも少しはあったが、全体的には非常に楽しめて満足だった。そもそも今作は「ザック・スナイダーカット」なのだから上のような不満はあまり重要ではないかもしれない。何より、今作は世界中のファンの運動により実現した作品であり、ファンダムの力を改めて思い知らされた。このような運動には、製作者がファンに譲歩してしまうのでは、と否定的な声もあるとは思うが、ファンダムの熱意で今作が誕生したことは事実であり、歴史的作品をリアルタイムで鑑賞できて非常に嬉しい。

(出来たらIMAXレーザーでやって頂けませんか…)

 

P.S.

 エンドクレジットでザック・スナイダーの娘Autumnに捧げられ、彼女が好きであったHallelujahのカバーが流れることからも分かるように今作は彼のパーソナルな映画でもある。最後まで(未来編は除く)ブラック・スーツを身に纏ったスーパーマンに初めは違和感も少しあったが、喪に服す意味合いもあったのかもしれない。彼のパーソナルな物語は壮大な神話となり、それは観客を別世界へ誘い、没頭させ、現実でも前進する力を与えてくれる。